今、いるところは: ホーム > 資料集 > 「カリタスの家」に関する資料
標記資料はpdfファイルでファイルサイズが大きく閲覧しにくいので、その中の「カリタスの家」に関する資料を抜粋して掲載します。詳しくは、第1回障害者虐待防止についての勉強会資料をご覧ください。資料2は、「障害者虐待防止についての勉強会」メンバーでいらっしゃる野沢和弘氏(毎日新聞社社会部副部長・全日本手をつなぐ育成会権利擁護委員会委員長)が作成されたものです。参考資料2は福岡県保健福祉部が作成した「かいたっくす」の特別監査に関するレポートです。
カリタスの家(福岡県)
97年12月、社会福祉法人として認可され、98年に開設。利用者は男女46人で、うち入所34人、通所10人、短期2人。職員は施設長以下26人。自閉症の専門施設。
虐待
- 「(入所者に) 顔がいいか、腹がいいかと言って、ボクシンググローブで殴った。
- 「これ、おいしいよ」と言って唐辛子を食べさせ、「コーヒーだよ」と言って木酢液を飲ませた。吐き出したり苦しむ姿を見て、(職員は) 笑っていた。
- 食事が遅いと「いらんなら、さげるぞ」と言って(入所者の)首を絞めたり、テレビ用のりモコンやコップで顔を殴り、まゆの上を切った。
- 生の唐辛子を食べさせられた入所者が、唐辛子の汁や粉のついた手で目をこすったため、苦しそうに涙を流したり、吐き出す姿を見て職員は笑っていた。
- 気に入らない入所者の頭をスリッパで何度もたたいた。
- 入所者の食事が遅いという理由で、おかずの一部を犬に与える。
- 施設長は男性入所者に沸騰した湯でいれたコーヒーを無理やり3杯も飲ませ、目やのど、食道のヤケドで約1カ月の重傷を負わせた。
- 「お菓子だ」と言ってキャラメルの包装紙を、「おいしいよ」と言って唐辛子を食べさせた。木酢液をスプレーで鼻に吹き付けた。
- 男性入所者の下半身を数回けり上げ、重傷を負わせながら「同室の入所者による暴力が原因」と責任転嫁する虚偽の報告をしていた。
- 入所者がB型肝炎に感染し、劇症肝炎寸前に陥った。ウイルスを持つ同じ入所者から感染したとみられるが、職員数が少ないことを理由に感染防止策をとっていなかった。
- 女性の預金口座から、900万円を勝手に引き出し、カリタスの家の建設資金に流用。
- 20代の女性入所者がパニック状態になるたびに寝具用の袋に詰め込まれ、別室に数時間から一晩、放置されていた。"袋詰め"は数年前から恒常的に行われており、多くの職員が疑問を感じながらも、パニック時の対処法が分からず黙認していた。
職員の問題
- 職員同士仲が良く、ナァナァになって、(虐待を) 注意できる雰囲気になかった。入所者が暴れるなどパニック状態になった時、対処法が分からず、殴ったり、けったりした。「申し訳ないことをしたと思うが、療育面での専門的な知識を身につけない限り、私が犯した過ちは繰り返されるだろう」(職員)
- 入所者数人が一部の職員に改善を訴えていた。しかし、「問題の職員を解雇すると代わりがいない」と不問に付された。
- 虐待した職員へ直接抗議を考えた施設関係者もいたが「会話の可能な入所者は数人しかおらず、特定され、報復される」と断念。
- 約4年前、第三者も加わった苦情解決委員会を設置したが、責任者に法人常務理事でもある施設長を据え、第三者委員も法人理事らが名を連ねるなど、ほとんど"身内"で固めていた。保護者の多くが、苦情解決委員会の存在を2年前まで知らされていなかった。複数の保護者は「委員会への苦情は施設長らに対する苦情と同じ。相談できるはずがない」。県の特別監査の結果でも、苦情解決に関する会議が開かれたことは一度もなかったことが判明。
- 問題の職員は短絡的に暴力に走る傾向があり、入所者はパニック状態になりがちだった。
- 障害が特に重く、会話のできない、抵抗できない人に限られていた。
- 被害者のほとんどは自らの頭を床に打ち付けるなどの自傷や他者にかみつくなどの他傷行為の目立つ重度の知的障害者。
行政の対応
- 県障害者福祉課の担当者は「重度の人たちを積極的に受け入れる立派な施設」と評価。施設長も「監査では、いつも礼を言われる。県からは感謝されている」と胸を張っていた。
- 県関係者は「どんなに重度でも受け入れ可能な施設はここだけと言っていい。受け入れ先の拡充に消極的な県の怠慢もあり、便利な施設に強くは言えない」
- 何人もの関係者が県に実情を訴えたが「改善されることはなかった」。NPO法人「人権オンブズ福岡」も再三処遇面への指導を県に求めていたが「なしのつぶて状態」だった。
- 理事会議事録には理事が「見えない所で日常的に(暴力は) 行われていると思う。指導が必要」と指摘していたが、県側は「情報も告発もなく動きようがなかった」
保護者の対応
- ある母親は、帰省した子どもを入浴させた際、胸に青アザがあるのに気付いた。けがの程度から「(職員に) やられた」と直感、施設長に問いただそうとしたが「口を出せば、施設を追い出される」と不安になり、思いとどまった。
- 我が子のけがに不審を抱いた保護者も少なくないが、「どの施設にも入れず、心中を考えていた時、迎え入れてくれた。文句など言えない」。「施設長は救いの神様。施設内で何が行われていようと、従うしかない」と口をそろえる。
平成17年 2月 8日保健福祉部障害者福祉課監査保護課社会福祉法人「かいたっくす」の特別監査について
1 施設の概要
法人名 社会福祉法人 かいたっくす
理事長 滑石 七五三夫(なめらいし しめお)施設種別 知的障害者更正施設(入所) 施設名 カリタスの家 開設年月日 平成10年 9月 1日 定員 (入所 34人)(通所 10人) 所在地 嘉穂郡頴田町大字勢田119-14
2 監査の経緯
平成16年12月 9日から平成17年 1月28日まで8回に亘り、法人、施設に対する特別監査を実施し、法人役員、職員、元職員、利用者、利用者の保護者及び元利用者の保護者など200人に対する事情聴取を行うなどにより、支援サービス提供の状況や法人等運営の実態について調査を行った。
3 監査の結果
(1)施設運営について
ア 支援サービス提供の状況について
支援サービス提供に際し、日時や回数などは確定できないが、複数の証言などから一部の職員により不適切な行為が行われていた可能性が高く、不適正な施設運営があったと認めざるを得ない。
- (ア) 炭・唐辛子・菓子の包み紙を利用者に食べさせたこと。
- (イ) 木酢液を顔などにかけたこと。
- (ウ) 熱いコーヒーによりヤケドを負わせたこと。
- (エ) 手足・道具を使って身体を叩いたこと。
- (オ) リネン袋に入れたこと。
※(イ)~(オ)は利用者の自傷・他害等(以下「パニック」という。)時に対応する際に行われた不適切な行為。
(考えられる要因)
- (ア) 利用者ごとの個別支援計画に基づく適切な支援サービス提供がなされず、パニック時の突発的事案の対応などに終始していたこと。
- (イ) 支援サービス提供に当たって、全体を統括する幹部職員の指導体制が整っていなかったこと。
イ 管理運営について
「カリタスの家」の通所利用者を入所定員を超えて恒常的に宿泊させるなど不適正な施設運営が行われていた。
(2)法人運営について
ア 理事会運営について
一部の理事が、事前に理事会に諮らず法人運営上の重要案件である法人借入金及びそのための法人財産の担保提供を行うなど、不適正な運営を行っていた。
また、理事会としての内部牽制が十分でないなど理事会の責務が果たされていない。
イ 苦情解決体制について
利用者等からの苦情や要望などの解決に向けた苦情解決体制が設けられているが、苦情解決に係る会議が開催されたことなどもなく機能していなかった。
4 今後の対応
(1)法人に対する改善指導について
法人に対して、適正な法人・施設運営を図るため、次の点を改善指導し、報告を求めるとともに、確認等を行うこととしている。
ア 法人として不適正な運営の原因を究明し、その責任を明確化するとともに、法人・施設運営体制の抜本的な刷新を図ること。
イ 支援サービス提供上の不適切な行為の再発防止策を確立すること。
(2)福岡県自閉症・発達障害支援センターの運営委託について
同法人に対して、福岡県自閉症・発達障害支援センターの運営委託を行っているが、早急に委託先の変更を含めた検討を行うこととしている。
(3)苦情解決体制について
各法人・施設においては、利用者の苦情や要望等を適切に解決するため、第三者委員も含めた苦情解決体制が設けられているが、今後、施設種別協議会など関係団体の協力も得ながら、苦情解決体制の活性化に取り組むこととする。