今、いるところは: ホーム > 資料集 > よくある質問コーナーQ&A


<よくある質問コーナーQ&A>
No.質問項目
1自閉症って何?
2自閉症の行動特性は?
3自閉症の原因は?
4自閉症って治るの?
5自閉症って、どこで診断してくれるの?
6どうやって診断するの?
7自閉症の人ってどれぐらいいるの?
8診断を受けたらどうしたらいいの?
9困ったときは、どうすればよいの?/悩みを気軽に相談できる人は?/自閉症や自閉症児者の育て方についてはどうやって勉強したらよいの?/自閉症についての情報はどこで手にいれられるの?/参考になる本は?
10自閉症児者の親の心構えで大切なことは?
11自閉症の人の将来はどうなるの?
12子育て・支援にあたって一番大切なことは?
13自閉症の人って、どんなことで困っているの?
14自閉症特有の強みってあるの?
15自閉症の人を教育・支援するときに基本的に理解しておかなければならないことは?
16自閉症の人には具体的にどのような支援が有効なの?
17自閉症の人は、余暇にはどんなことをしているの?
18ボランティアをしたいのだが、どうすればよいの?
19主要参考・引用文献

質問 1:自閉症って何?

自閉症は親の子育ての失敗によって引き起こされた、いわゆる「心の病」ではありません。自閉症は中枢神経系(脳)の機能障害です。後天的なものではないので、現在では発達障害として分類されています。つまり、脳が異なった特性を持って生まれてきたということです。ですから、生まれつきあるいは生まれてまもなくから、普通の人と同じように見たり、聞いたり、感じたりすることができず(認知面での障害)、独特の工夫をしながら世の中を理解していきます。その世の中の理解の仕方に普通の人とのずれがあるために、比較的早い時期から様々な自閉症に由来する行動上の特性が現れてきます。しかし、その現れ方には個人差も大きく、周囲が気づかないことも少なくありません。特に知的遅れ(精神遅滞)を伴わない場合は、親でも気づかない場合が多いのが現状です。

質問 2:自閉症の行動特性は?

  1. ウィングの三つ組み
     ご自身のお子さんも自閉症のローナ・ウィングという児童精神科医は、自閉症の主要な特性として、次の三点をあげています。
    • その第一は、親との関わりも含め人との関わり方が希薄であったり、変わっていたりすることです。「社会的相互交渉の質的障害」といわれています。小さいころには、抱かれるのを嫌がったり、視線を避けたり、一人遊びが上手な育てやすい子であったり、人の存在を無視して勝手気ままに飛び回っている子どもがいるかと思うと、逆に人見知りをしなかったり、人の顔を凝視したり様々な行動として現れます。このように人とのかかわり方に様々な形があるのは、自閉症といっても、大きく三つのタイプがあるからです。
      • 一つは、他人との関わりを全く求めないかのようにふるまうタイプで、孤立型といわれています。自分の殻に閉じこもっているように見え、「自閉症」という言葉のイメージに合致したタイプです。
      • 二つ目は、受動型と呼ばれ、人から働きかければ従順に応じるのですが、自分の意思を人に伝えるのが苦手なタイプです。「指示待ちタイプ」といわれたりします。
      • 三つ目は、「自閉症」という言葉からは、程遠い、積極的だが奇異なタイプです。いわば人の迷惑を考えずに、一方的に人と関わりを持とうとするようなタイプです。
       自閉症というと、第一のタイプをイメージしがちですが、人との関わりの質的な障害といっても、いろいろなタイプがあることを知っておく必要があります(実は、ウィングは、この三つのほかにも「形式ばった大仰な」タイプというのもあると指摘しています)。いずれのタイプであっても、他の人と協調性をもって何かをしたり、人の気持ちを理解するのが苦手です。また、年齢とともにタイプが変わっていく場合もあります。
    • 三つ組みの第二は、「コミュニケーションの質的障害」です。コミュニケーションというと、すぐに言葉をイメージしますが、自閉症の場合、言葉だけでなく、身振りなどの非言語性のコミュニケーションにも特異さを抱えている場合が少なくありません。
       多くの場合、言葉の発達の遅れが見られます。また、言葉が出ても、何かわけの分からない言葉を独り言のように繰り返したり、人の言った言葉をそのまま繰り返す「オウム返し(エコラリア)」が多かったりします。流暢に言葉を操れる場合でも、独自の造語を使ったり、感情のこもっていないようなしゃべり方をしたりします。いずれの場合でも、普通とは異なる言葉の使い方が見られます。また、聞こえないわけではないのですが、呼びかけに応じなかったり、よくしゃべる人でも、言葉の内容を聞き取って理解するほうが苦手なのが一つの大きな特徴です。
       言葉以外のコミュニケーションでは、何か物を取ってもらいたい場合に指差しを使わず、近くにいる人の手首をつかみ、物の方に誘導して(クレーン・ハンド)、意思表示したりします。「ママ、ほら飛行機だよ!」といったような人の注意や感情の共有を促す指差しも苦手なことがあります。また、俗に言う「目でものを語る」ことなどが難しい場合が少なくありません。
    • 三つ組みの第三の特徴としては、「想像力の弱さ」あるいは「限局した行動と興味」という点をあげることができます。例えば、石ころやミニカーをただ並べることを延々と繰り返したり、トーマスやアンパンマン、ウルトラマンといった特定のキャラクターにしか興味を示さず、それでしか遊ばないといったように、人によって活動や興味の対象は異なりますが、一つの物や事柄に極端に固執する傾向があります。
       また、ある物はいつも決まった場所に置く、窓を見れば常に閉めて回る、あるいは、どこかへいく場合には決まった道順でないと納得しないといったように、特定の状態や手順への強いこだわりがよく見られます。これは、本人が決めた本人だけの決まりごとですが、そうした決まりごとを他人が破ると、たいへん苦痛を感じるようで、時にはパニックになったりすることもあります。
       これらの特性は、変化を容易に受け入れたり、将来を予測したりする想像力の弱さに起因していると言われています。また、いわゆる「ままごと」などの「ごっこ遊び」や、「見立て遊び」が苦手なのも、この想像力の弱さと関係しています。
    • こうした「ウィングの三つ組み」といわれる行動特性は、通常、3歳以前から見られます。ただし、1~2歳ごろまでは、言葉の面でもそれほど遅れが目立たず、順調に成長しているかに見える場合でも、その後、急激にこうした特性が目立ってくる場合もあります。また、3歳前後になって、他の子どもとの違いが明らかになって気づく場合が少なくありません。
  2. 感覚に関連した特性
     自閉症の人は、聴覚、視覚、味覚、臭覚、触覚などの感覚が通常とは異なっている場合があります。
     掃除機の音など特定の刺激をとても恐れたり、蛍光灯の光を怖がったり、目玉焼きは焦げた白身しか食べないといったような過度の偏食があったり、何でも物を嗅いでみたり、体に泡のつくのをいやがったり、歯磨きを猛然と拒否したり、個々人によって違いはありますが、多くの自閉症児者は感覚の面で問題を抱えています。私たちにとってはなんでもない刺激であっても、本人にとって不快な刺激となっている場合が少なくありません。そうした刺激にさらされると、とても苦痛を感じ、混乱したり、パニックにおちいったりすることもあります。ある種の音に敏感な子どもたちは、しばしばその音が聞こえると耳ふさぎをして、その音から逃れようとしたりします。
     本人たちが不快なだけでなく、例えば寒さ・暑さ、ある種の痛みの感じ方が異なり、見過ごすと、本人たちの身の安全に関係するような問題につながる場合もあります。
     また、ある角度でものを見たり、くるくる回ったり、手をひらひらさせたり、独特の感覚刺激を楽しんでいるかのような振る舞いもよく見られます。
  3. 発達のバランスに関連した特性
     自閉症の人たちには、通常、発達面でのばらつきが見られます。例えば、パズルなどは、年齢相応かそれ以上に得意であるのに、言語の理解はほとんどできないとか、知能的には遅れを示していないのに、細かい作業などでは極端に不器用であるとかといったように、発達の仕方に偏りがあります。そのため、周囲の人は「どうしてそんなことができるのに、こんな簡単なことができないの?」と感じることも少なくありません。
     つまり、発達しないのではなく、自閉症の場合、発達の仕方が通常とは異なるということです。
  4. 知的機能面での特性
     多くの場合、知的遅れ(精神遅滞)を伴い、排泄など身辺自立等にも遅れが見られます。しかし、その場合であっても、数を覚えるとか、パズルをするとかいったように、特定の限られた分野では平均かそれ以上の能力を示すことも珍しくありません。
     また、過度の知的遅れを伴わない自閉症もあります(一般的にはIQが70以上を指します)。その場合、高機能自閉症とかアスペルガー症候群と呼ばれたりもします。特にアスペルガー症候群と診断される人々は、言葉の遅れもほとんど目立ちません。こうした人たちの中には、傑出した才能を持つ人もいます。歴史上の人物としては、アインシュタインなどがあげられたりもします。しかし、そうした人たちであっても、基本的な自閉症の特性はもちあわせており、様々な困難さを抱えていることに変わりはありません。
     しかし、一見して普通に見えるだけに周囲が気づかず、必要な教育や支援を得られない場合が少なくありません。そればかりか、障害の特性ゆえの行動が単なるわがままと誤解され、周囲との摩擦を生んだりすることがあります。特に、人間関係の構築に弱い面があるため、いじめの対象となることも少なくありません。そのような状況が重なって、思春期や成人期になり、他の精神的二次障害や様々な行動障害を発症したり、引きこもりにつながったりする場合もあります。残念ながら、このタイプの子どもたちへの社会的理解はとても遅れた状況にあります。
     また、最近では、こうした基本特性をもちながらもバリエーションに富む自閉症を表現する言葉として、「自閉症スペクトラム」「自閉症スペクトル」(いずれも「自閉症連続帯」)という言葉がよく使われています。
  5. 多動と寡動・学習障害

     自閉症の子どもたちの中には、すばしっこく動き回り、一時も同じところにじっとしていないといった多動傾向を示す場合があります。多動自体は、ADHD(注意欠陥/多動性障害)などでも見られる行動特性ですが、自閉症の場合も、特に幼児期や小学校低学年の時期に、多動を伴うことが少なくありません。他方、自閉症の子どもたちの中には、自分の知らない場所に行ったときなど、逆に頑として座り込んだまま動かないといったように寡動の傾向を伴っている場合もあります。

     また、特定の教科に著しい遅れを見せる学習障害(LD)を伴う場合もあります。
     自閉症スペクトラム(自閉症スペクトル)、LD、ADHDの相互関係については、北九州市総合療育センターの河野義恭先生による、以下の概念図を参考にしていただければ、分かりやすいと思います。

    自閉症スペクトラム、LD、ADHDの相互関係概念図

  6. パニック
     パニック自体は、自閉症の本質的な行動特性ではありません。私たちと同様、何らかの理由でストレスが高まった際に起こします。ただ、その激しさが異なるという特徴があり、自傷行為におよぶ場合もあります。
     パニックというと大きな癇癪(かんしゃく)をイメージしますが、延々としくしく泣き続けるなどもパニックの一つといえます。
     パニックは、ある意味では本人たちの発する「もう耐えられない」という合図でもあります。パニックは、わがままの表れに過ぎないなどといった固定的観念に囚われていると、本人たちが発しているこの合図を見落としてしまうことがあるので注意が必要です。
  7. 睡眠の乱れ
     しばしば、睡眠のリズムが崩れたり、極度に睡眠時間が短い人もいます。
  8. いわゆる「問題行動」
     問題行動を起こすことが自閉症の特性のように誤解されたりもしますが、自閉症であるから問題行動を起こすのでは決してありません。自閉症の特性を理解しない周囲の不適切な対応が問題行動につながるのです。さらに重要なのは、問題行動と決め付ける前に、誰が、どうして困っているのかを、冷静に考えてみる必要もあります。実は、意外に、誰も困っていないし、誰にも迷惑をかけていない場合が少なくありません。私たちの単なる思い込みがそれを問題行動だと決め付けているだけかもしれません。

質問 3:自閉症の原因は?

自閉症は、胎生期または周産期に何らかの原因によって生じた、中枢神経系(脳)の機能障害です。しかし、脳のどの部位に器質的な欠損があるのか、あるいは脳のどのような機能に本質的な問題があるのか、現代の医学水準では解明されていません。そのため、時として新たな原因論がセンセーショナルに取り上げられたりします。しかし、科学的根拠を欠いたものも少なくありません。誤った原因論に立った治療法に安易に飛びつかないよう、特に注意する必要があります。最近では、遺伝的要因も含めいくつかの有力な説が出されていますが、それでも複数の要因の組み合わせによって生じるという考え方を支持する人が多いようです。
 自閉症は、親の育て方が悪いからなるわけではありません。心理的な原因によって生じる情緒障害でもありません。しかし、その後の成長過程の中で、周囲の理解のなさが原因となり、さまざまな二次障害を引き起こすことはあります。その意味でも周囲の理解は不可欠です。

質問 4:自閉症って治るの?

現在の医学水準では、「カゼが治る」といったのと同じ意味で治すことはできません。生涯にわたり何らかの形で、その障害特性は残ると考えられています。自閉症そのものに効果的な薬もありません。「自閉症が治る」といった含みをもった発言には、冷静に対応する必要があります。

むしろ自閉症の特性を十分に理解し、その特性に配慮した形での教育が重要となってきます。そのことによって、本人の理解力や様々な能力を育み、より自立した、そしてより充実した社会参加ができるように支援していくことが重要です。

質問 5:自閉症って、どこで診断してくれるの?

基本的には、各地の児童神経科・精神科・小児科などの医療機関が診断を下すことになりますが、障害児教育専門の大学・研究所や療育機関でも「診断」することは可能です。いずれにしても、重要なのは、自閉症について熟知した専門家(必ずしも医師とは限りません)に診断してもらうことです。

北九州市近郊の場合、まず、北九州市総合療育センター(〒802-0803 小倉南区春ヶ丘10番2号 TEL:(093) 922-5596 FAX:(093) 952-2713)で診断を受けることをお勧めします。

質問 6:どうやって診断するの?

通常、各種の心理・発達検査や本人や家族への問診、行動観察など多角的に見ていくことになります。場合によっては脳波やMRI(磁気共鳴映像法)などをとったりしますが、何らかの理由がないかぎり血液検査などは行われないのが普通です。本人にとっての肉体的苦痛はほとんどないので、不安があったら、受診してみることをお勧めします。その時点で判断できないときは、通常、経過観察がなされます。きちんとした機関であれば診断は慎重に行われますので、安心してください。

もし、その診断に納得がいかない場合は、他の機関でセカンド・オピニオン(確認のための診断)を求めましょう。

もっとも気をつけなければならないのは、親の見栄や世間体で現実に目をつむってしまうことです。それは、本人にとっても家族にとっても良い結果をもたらしません。子どもの発達について相談したり、受診したりすることは決して恥ずかしいことではありません。子どもさんの特性を理解することで、新たな一歩を踏み出すことにつながるはずです。

質問 7:自閉症の人ってどれぐらいいるの?

自閉症の発症率に関しては、ウィングが1万人に2~3人というものから58人というものまであげているように、かなり異なっています。この違いは、診断基準の違いにもよりますが、アスペルガー症候群を抱えた人々をどの程度把握しているかに起因しているように思われます。また、検診制度の充実などによって、発見率が高まったことも影響しているかもしれません。

かりに、1万人に1人という説をとれば、現在の北九州市の人口を100万人とした場合、たった100人しかいないということになりますが、つい3年ほど前にできた当会の部会である北九州TEACCHプログラム勉強会の会員数が既に100名を超えている現状を考えますと、これは実態とは大きくかけ離れていることがわかります。

後者の58人という説をとると5,800人で、大体170人に1人の割合になります。ギルバーグという研究者は、2003年に邦訳された研究書の日本語版序文で、200人に1人と推定しています。周囲が気づいていないアスペルガー症候群を抱えた人々を含めれば、後者のほうが実態に近いかもしれません。

質問 8:診断を受けたらどうしたらいいの?

まず、診断を受けたならば、自閉症とはどういうものなのか、今後どのような点に注意しながら育てていったらよいのか、相談してください。説明が分からなければ、遠慮せず「分からないので、もうすこし教えてください」とたずねてみることが大切です。通常、診断はしたが、その後のフォローがないということはありません。

また、北九州市の場合、北九州市発達障害者支援センター「つばさ」(〒802-0803 小倉南区春ヶ丘10番2号 北九州市立総合療育センター内 TEL:(093) 922-5523 FAX:(093) 922-5523)に相談してみるのも良いと思います。

診断を受けたら、自閉症の特性にあった療育・教育に取り組むことが大切です。早ければ早いほど良いといわれています。それだけ本人の混乱を少なくできるからです。よく、グレーゾーン(はっきりしない)と言われたので、まだ何もしていませんという方がいますが、それは誤りです。グレーゾーンの場合は、一応自閉症として、適切な支援を考えてあげてください。たとえ自閉症でなかったとしても、子どもの発達にとってプラスにこそなれ、マイナスにはなりません。

少し気持ちの整理ができたら、まず大切なのは、親や周囲の人々が、自閉症の特性について正しい情報を得て、きちんと理解することです。信頼できるインターネットのサイトで情報を得たり、関連書籍を読んだり、また、専門機関や各地で作られている「北九州市自閉症協会」等が主催している勉強会や講習会に参加することも大切です。自閉症に対する理解が深まるほか、お子さんを育てていく上での具体的なヒントが提供されるはずです。また、勉強会や講習会で巡り合った人々との何気ない会話が、しばしば親にとっての心の支えになったりします。

さらに、社会に対しても積極的に自閉症を理解してもらうように働きかけていくことも忘れないでください。社会の理解とそれに基づいた協力・支援は、本人や家族の社会参加の幅を広げ、生活の質を高めていくためにも必要不可欠です。

いずれにしても、自閉症の特性を正しく理解し、適切な支援をしていくことがとても大切です。その意味からも正しい情報を常に入手するように心がけてください。

質問 9:困ったときは、どうすればよいの?/悩みを気軽に相談できる人は?/自閉症や自閉症児者の育て方についてはどうやって勉強したらよいの?/自閉症についての情報はどこで手にいれられるの?/参考になる本は?

よくあるこうした質問に対しては一括してお答えしたいと思います。

まずは、専門機関や総合療育センター発達障害者支援センター特別支援教育相談センターなどに相談してみることです。

また、こうした、いわば公的な機関と同様に重要なのが、「親の会」です。情報の宝庫でもあります。悩みを気軽に相談できる様々な機会も提供されています。

大切なのは、自閉症について深く理解している機関や組織と常に関わっていくことです。自閉症に対して理解の乏しい機関や組織では、こうした質問に対する適切な回答は期待できません。その選択が重要です。不適切な対応は事態を悪化させことにつながる場合もあります。

自閉症関連の参考図書はこちらをご覧ください

質問10:自閉症児者の親の心構えで大切なことは?

一番大切なことは、自閉症の特性をよく理解することです。その上で、私たちの世界を、本人たちが分かるように紹介し、本人たちの世界も尊重しながら共存していくことです。このことを「自閉症の文化を尊重することだ」という人もいます。異なる文化が共存していくのですから、お互い譲り合わなければなりません。ただ、お互いの文化から学ぶところも決して少なくないはずです。自閉症の人たちも成長する力を持っています。そのことを忘れず、ともに成長していくといった気持ちを持ってください。

そのような心構えをもって接すれば、子育てもきっと楽しくなってくるはずです。私たちの日々の生活が楽しくなければ、自閉症の人たちも楽しいはずがありません。自閉症児者の子育てを楽しんでいる多くの仲間がいることを忘れないでください。

質問11:自閉症の人の将来はどうなるの?

適切な支援体制が確保できれば、機能的に低いといわれている人でも、社会生活を営むだけでなく、その人にあった職に就くなどして社会貢献することは十分可能です。また、高機能自閉症やアスペルガー症候群を抱えている人の中には、その傑出した才能を開花させ、専門職に就いているケースなども少なくありません。

しかし、いずれの場合においても職場をはじめ、社会全体の理解は不可欠です。

では、社会の理解を促進するにはどうしたらよいか?

まずは、本人を取り巻く親や近親者が、積極的に社会に対して働きかけ、理解を得る努力をしていくことです。本人たちを支援する体制作りは、まさしく私たち自身の肩にかかっています。

また、高機能自閉症やアスペルガー症候群を抱えた人々自身が自ら声をあげている場合もあります。本当の意味で、自分たちの特性、文化を伝えることができるのは、本人たち以外にないことはいうまでもありません。私たちには、そうした声に真摯に耳を傾け、理解し、適切な支援を提供していくという姿勢が重要です。

質問12:子育て・支援にあたって一番大切なことは?

一番大切なことは、とにかく自閉症の特性を理解することです。自閉症の特性を理解していない療育・教育・支援は、本人たちのためにはならないと考えてください。

自閉症の特性の理解にあたっては、本人たちの強みと弱みを正確に把握することです。個人差もありますが、基本的には、視覚的理解に強みを持っています。言葉で言っても通じないのに、簡単な絵を描いてあげると理解してくれたということは、しばしば経験することです。

また、私たちの論理を一方的に押し付けないことが大切です。「これは、こうするものだ」「これは、こうしなければならない」と一般に言われていることで、本当にそうしなければならないことは、実はあまり多くありません。私たち自身が創り出してきた既成概念の中には、どうでもよいことも結構あるものです。そうしたものを一方的に押し付けている場合が少なくありません。本人たちには本人たちのものの見方、考え方、やり方があるということを、忘れないでください。

もちろん、その双方の見方、考え方、やり方の違いが重大な問題につながる場合には、両者の溝を丁寧に埋めていく必要があります。しかし、よく考えると単なる好みの問題であったり、世間体が悪いからといったレベルの問題も少なくないはずです。そのような場合は、むしろ相手の文化を尊重してください。世の中には多様な価値観があり、それを認めていく姿勢がとても重要です。

質問13:自閉症の人って、どんなことで困っているの?

これは、自閉症の人たちの弱みの問題と関連します。私たちもそうですが、弱みを指摘されたり、苦手なことを強要されたりするのは好きではありませんし、時として反発したくなります。自閉症の人たちも同じです。ただ、その弱みの数は、私たちよりもかなり多いのは事実です。各項目が互いに関連している場合もありますが、具体的には、弱みとして次のようなものをあげることができます。

以上、個人差もありますが、こうした弱みを少なからず持ち合わせているというのが自閉症の人たちなのです。理解していただきたいのは、こうした弱みは自閉症という障害に由来するものだということです。ですから、本人たちがいくら努力しても、弱みは弱みとして残るということです。

その弱みを、何らの支援も与えられず、とにかく「克服しろ! 頑張ればできる」と言われ、「なぜ、できないのか」と怒鳴られる、自閉症の人たちがもっとも困惑するのは、まさしくそのような時だということを忘れないでください。

質問14:自閉症特有の強みってあるの?

ある意味では、弱点の多くが強みといえるかもしれません。とにかく、関心さえあれば、細部に集中できますし、一つのことを持続できます。基本的には、相手の気持ちを利用して騙すようなことはできない、きわめて正直な人々です。融通性のなさは、きまじめ・律儀であると見ることもできます。決まりごとに固執することは、ある場合には、立派な行為となります。さらに、視覚でものを考えたり、空間認知が私たちと異なることが、私たちには気づかない新たな科学的発見や芸術をもたらしたりします。

個人差はあり、程度も異なりますが、強み、得意な面は必ずあるはずです。周囲が見出せないで埋もれている場合が多いように思います。

質問15:自閉症の人を教育・支援するときに基本的に理解しておかなければならないことは?

自閉症の特性をよく理解したうえで、まず大切なのは、弱点を治そうとするのではなく、強みを利用しながら、弱みを補っていくといった視点をもつことです。「なせばなる」的な精神主義は、効果的な教育や支援につながりません。

また、相手の「文化」を尊重するという姿勢も同様にとても大切です。こちらの論理、常識だけを一方的に押し付けず、不可解な行動があったとしても、その行動の意味をまず考えてみることが重要です。その上で、お互いの「文化」が共存していくための妥協点を見出すといった考え方に立ってください。

さらに、個々人の特性にも配慮してください。例えば、ある種の刺激に過敏な人に、その刺激に慣れろと強要するのは、本人たちにとっては苦痛以外のなにものでもありません。私たちが熱湯の中に入れられて、我慢すれば熱くなくなると言われているのと同じことであると理解してください。

質問16:自閉症の人には具体的にどのような支援が有効なの?

以上が具体的な支援方法の原則ですが、重要なのは、自閉症の特性を理解したうえで、さらに本人個人の特性を理解し、具体的に考えていくことです。型にはまったマニュアルがあるのではなく、私たちが個々人に応じて工夫していくことが重要です。

質問17:自閉症の人は、余暇にはどんなことをしているの?

どのような活動も可能です。しかし、集団ゲームが苦手であるとか、想像力を働かせる遊びが苦手であるとか、遊びや余暇だからといって、自閉症の特性が失われるわけではありません。人ごみを嫌ったり、感覚過敏があったりしますので、そのような嫌悪刺激の伴う遊びや、自閉症の弱みに配慮を欠いた遊びは、本人にとって遊びにはなっていないこともあります。本当に楽しんでいるか、リラックスできるか、気分転換になっているのか、この3点をクリアーしていなければ余暇にならないことを十分に理解しておくことが重要です。

また、いわゆる遊びの輪に入れない場合などは、遊びたいのだが、遊び方がわからない、遊べないといった場合もあります。その際には、視覚的支援を用いるなど構造化して遊び方を教えてあげることなどが必要となります。ただし、その場合でも、本当に楽しいのかどうか、本人たちの状況をよく把握することが大切であることに変わりはありません。

遊び・余暇とはこういうものだと頭から決めつけず、柔軟に考えていく必要があります。

質問18:ボランティアをしたいのだが、どうすればよいの?

北九州市自閉症協会事務局にご連絡ください。大歓迎です。よく、自閉症児者のボランティアは難しいといって、敬遠されてしまうのですが、自閉症児者も、ボランティアさんの協力が必要なことはいうまでもありません。家族にとっても同じです。むしろ自閉症児者にとっての人的支援は、車椅子を使われている方にとってのスロープと同様に必要不可欠なものです。

一人でも多くの方のご理解とご協力が私たちにとってなによりの支援となります。

※現在ボランティアは募集しておりません。

主要参考・引用文献